「クラシック シェービングの深淵に迫る」企画として、ここまでに両刃カミソリとシェービングブラシを紹介してきました。
今回は、最も歴史の深いカミソリである「直刃カミソリ」について学んでいきましょう。
クラシック シェービング~直刃カミソリとは~
T 字カミソリと違い、直刃カミソリとは柄と刃が一直線になったカミソリのことです。古くから使用されている歴史があり、英語では「ストレート・レザー」と言うのでほぼ直訳です。
余談ですが、直刃カミソリしかない時代にわざわざ「直刃」とは言わないでしょうから、「直刃・ストレート」はT字カミソリ普及後に後付けされた呼称かもしれませんね。
日本カミソリと西洋カミソリの違い
直刃カミソリには日本カミソリと西洋カミソリがあり、日本カミソリは片刃、西洋カミソリは両刃(V型)に刃付けされています。
刀剣の違いがそのまま出ているのが興味深いところです。
日本カミソリ
日本カミソリは、日本刀の技術を活かして作られています。江戸時代に月代の習慣とともに普及しましたが、現在は日本カミソリを作っている鍛冶屋さんは数軒だけしか残っていません。
西洋カミソリ
西洋カミソリは18世紀イギリス、鋳鋼の大量生産開始とともに普及しました。理髪店でお馴染み、折りたたみ式になっているのが特徴です。
安全カミソリに押され衰退してしまいましたが、アンティークとしての価値があり欧米を中心に熱烈なファンがいます。
クラシックシェービング~直刃カミソリの良さ~
それでは、直刃カミソリにはどんな利点があるのでしょうか?順番に見ていきましょう。
直刃カミソリの良さ①:切れ味バツグン!
ひげが溶けるかのように剃れていく切れ味こそが最大の特徴でしょう。一方、その切れ味故にシェービング時に少しでも強く押し付けてしまったり横滑りしてしまうと、容易く肌が切れてしまう
直刃カミソリの良さ②:半永久的に使える!
精巧な刀剣や包丁と同じように、研ぎなどの手入れを適切に行うことで半永久的に使うことが出来ます。一生ものどころか、2世代、3世代に渡って使うことも可能です。アンティークとして愛される理由でもありますね。
直刃カミソリの良さ③:所有する喜び
直刃カミソリは、永く使えるうえ道具としての美しさにあふれています。手入れにも相応の手間を要しますがその分愛着もわき、貴方のパートナーのような道具になるでしょう。
替刃式カミソリもあり
「理髪店でお馴染み」とは言ったものの、実は現在理髪店で使われているのは、ほとんどが替刃式の西洋カミソリです。衛生面と、研ぎが不要で扱いやすい点から普及しました。
刃の出が1㎜程度に抑えられていて比較的安全ですし、商品によっては肌が切れにくいガード付きのものもあります。
プロ(業務)用の製品が中心ですが、インターネットでも簡単に手に入れることができますので、興味のある方はこちらからチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
クラシックシェービング~直刃カミソリの使い方~
直刃カミソリを使うには、現代的な安全カミソリにはない独特の配慮が必要です。
直刃カミソリの使い方①:シェービング時
ひげを柔らかくするなどの準備や、剃るときの注意は安全カミソリを使うときとほぼ同様です。
直刃カミソリは肌を切りやすいので、刃の角度がぶれないようストロークを細かめにして剃る必要があります。また、肌をしっかり引っ張って剃るのも上手に剃るポイントです。
直刃カミソリの使い方②:消毒して衛生的に!
刃を取り替えない直刃カミソリでは、刃を衛生的に保つために消毒が欠かせません。
プロの現場ではアルコールを始めとした消毒液も使用されていますが、家庭では煮沸消毒がやりやすいでしょう。目安は沸騰水で2分程度です。毎回は難しくても、数度使用したら消毒するようにして下さい。
直刃カミソリの使い方③:研いで切れ味を保つ!
繊細な刃物である直刃カミソリは、切れ味を保つために研がなければいけません。これが、直刃カミソリのハードルを上げている最大の要因かもしれません。
カミソリを研ぐには通常の砥石のほか「革砥」で刃を磨き上げる工程が必要です。直刃カミソリは刃物なのできれいに研ぐためには技術が必要になりますが、前記の通り、今では直刃カミソリを研げる刃物屋さんや実際に研いで使っている理髪店も少なくなってきています。
自分でできるようになるためにも、まずは昔から直刃カミソリを使っている近場の理髪店を探すなど、しっかりと教えてもらいたいところです。
まとめ
今までご紹介した中でも最もディープだった直刃カミソリの世界、興味を持って頂けたでしょうか?
歴史があり奥が深い直刃カミソリ。この記事を読んでハマった方が、数年後にはもしかしたら日本を代表する直刃カミソリの研ぎ師に……なんてこともあり得るかもしれませんね!