大仰なタイトルから始まってしまった感もありますが、ひげ剃りの歴史は道具の歴史と言えるでしょう。今回はひげ剃りに使う道具の進化と特徴について考えていきたいと思います。
ひげを剃る原始人?
「原始人」といえば、ひげを伸ばしっぱなしのモジャモジャにしているイメージですが、有史以前から人はひげの手入れをしていました。
ひげを伸ばしっぱなしにしていると食事の時に邪魔になったり、ノミやシラミなどの温床になったりしてしまいます。また、ひげが呼気の湿気で凍りついてしまい凍傷の原因になるので、シベリアなど寒冷地域に進出していった新モンゴロイドはひげが退化していったと言われています。
このように、ひげは生物としての人類には全く無用の長物と言うべきものなのですが、伸ばしたり剃ったりとずっとお付き合いしていたのですね。
古代のカミソリとは?
では、大昔の人はどうやってひげを剃っていたのでしょうか?
まず、学校の授業でも習った「石器」を使っていたという説があります。この場合は「剃る」というよりはある程度伸びたひげを「切り落とす」という感じだったのではないでしょうか。
また、貝も利用されていたようです。大手カミソリメーカーの屋号にも使われていますね。貝を使うときは二枚貝をピンセットのように使ってつまんで抜くほか、研いで刃物のようにして剃ったりしていたようです。
この使い方だとかなり短く整えられたと想定できますし、これが「カミソリ」の元祖といえるかもしれません。
直刃カミソリの登場
その後、鉄器の発明にともなって鉄製のカミソリも登場、以後長くにわたって人類のひげ剃りのお供になります。しかし、精密な刃物であるカミソリは高価なもので、庶民にはなかなか行き渡らなかったようです。
日本で最初に月代(チョンマゲの頭頂部)をカミソリで剃ったのは織田信長だそうですが、その頃月代を整えるのは「つまんで抜く」が主流だったようで終わった頃には血まみれ、なんてこともあったようです。聞くだけで痛そうですね。
安全カミソリの登場
実に数千年にわたってひげ剃りの主流だった直刃カミソリですが、肌に当てる角度を誤ると皮膚が切れてしまう欠点がありました。そこで18世紀、フランス人のジャン=ジャック・ペレが鉋(かんな)のように刃の角度が固定された現在の安全カミソリの原型となるものを発明しました。
そして1901年、ペレの発明をさらに発展させT字型で刃の交換ができる「替刃式安全カミソリ」を発明したのがアメリカのキング・キャンプ・ジレットです。そう、あの大手カミソリメーカーの「ジレット」さんですね。
ちなみにジレットさん、最初は全く売れなかったんですがカミソリ本体を飲料のオマケで無料配布して大ヒットしたそうです。本体を安めに設定して替刃で利益を上げるビジネスは現代も健在ですね。
電気シェーバーの登場
電気シェーバーは1920年代末、アメリカの軍人だったジェイコブ・シックが発明しました。そう、これまた大手カミソリメーカーの「シック」さんですね。
シックさんは水もシェービングクリームも凍りついてしまう極寒のアラスカに配属され、ひげを剃るために毎朝大変な苦労をした経験から、水を使わずモーターで刃を動かす電気シェーバーの発明を着想しました。
また、現在では当たり前になったカートリッジ式で刃に触らずに交換ができる安全カミソリもシックさんの発明です。
まさに今日のひげ剃りの基礎を作った人物と言えるでしょう。
まとめ
太古の昔からひげを剃ってきた人間ですが、現在私たちが親しんでいるひげ剃りはここ100年ほどで急速に進化を遂げたものだということが分かりました。安全カミソリと電気シェーバーの登場は、まさにひげ剃りの文明開化といえるでしょう。
痛い思いをしてひげを抜いたり、直刃カミソリで肌を切ったりしながら進化させてくれた先人に感謝ですね!